企業情報システムアーキテクチャ

企業情報システムアーキテクチャ

企業情報システムアーキテクチャ

良い情報システムとは何でしょうか?それは、変化に適合できるシステムだと思います。言い換えれば、変化に適合できるアーキテクチャを持っているシステムになります。それは人間の認知能力の範囲でコントロールできるシステムでもあります。人間の認知できる範囲に合理的に分割するのも、アーキテクチャの役割です。その上で、分割されたモジュールが自立分散し、かつ全体調和の構造を持っていることが、私の考える理想型になります。こうすることによって、変化への対応が柔軟に行える構造を持つシステムができるはずです。

マネックス証券のCIOを勤められていた南波幸雄さんの著書。
題名のとおり、ザックマンフレームワークやEAなどの企業レベルのアーキテクチャの話から、概念データモデリング、アプリケーションポートフォリオの参照モデル、情報システム基盤と非機能要件、移行計画とアーキテクチャの成熟過程、そしてSOAやBIなどの個別の話題まで、幅広いテーマをお一人で書き上げられている。
非常に勉強になった。
著者はあとがきで、「発注側であるユーザ企業が賢くならなければいけない」と説き、人月で測る以上に、企業情報システムそのものの価値はどこにあるのかを理解できることが必要だという。
一通りの業務のシステム化が既に完成している今日では、動き続けているシステムの部分部分を順次「再開発」するという仕事が主になり、そこで必要になるのがアーキテクチャの考え方。本書全体を通して、企業情報システムを都市計画のアナロジーでとらえる「都市計画アプローチ」というキーワードが登場する。確かに「都市の再開発のアナロジー」で説明をされると、そのような仕事の難しさと目指すべきものを理解できた気になる。
August 2010:特集「新幹線直上に架けるJR東北縦貫線」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
たとえば、最近ニュースで読んだ「東北縦貫線計画」、上野始発の東北本線常磐線を、新幹線の線路上に更に高架路線を建設し、東京駅までつなげて縦貫させようという工事が進行しているとのこと。本書のメッセージを受け止めつつこのニュースを知ると、神業にも思えるプロジェクトを現実に実現できているならば、同じことが情報システムのプロジェクトで実現できないはずがないとも思えてくる。