香港2日目

朝、香港島の港からターボジェットに乗船して1時間、マカオに渡る。
到着してフェリーターミナルに着いてロビーからタクシー乗り場に向かう間、片言の日本語で耳元で話しかけてくる観光ガイド志願者たちが次々と歩み寄ってくる。こういうのが日本人が良く行くアジアの観光知的だよな、と喜んでしまう自分がいる…

ガイド志願者をやり過ごしてタクシーでセナド広場に行き、「地球の歩き方」に書かれている「モデルコース」に従って歩く。聖ドミニコ教会や聖アントニオ教会そして聖ポール天主堂跡など世界遺産エリアを巡る。途中(まだ朝方であまり店も開いていない)町並みを抜けて、道教寺院なども巡る。
この写真は聖ポール天主堂跡で、正面の壁の部分だけが現存して、その他は崩れてなくなっている。

セナド広場前のレストランで中華料理の昼食の後、タクシーでカジノへ行く。カジノでは1時間ほどしか時間がなかったけれど、沢木耕太郎深夜特急で読んだサイコロ賭博の「大小(タイスウ)」をやろうと決めていた。

ゾロ目が出るに至る目は「大大大大大小小小小小小」という具合に推移した。大が続いたあたりから場は盛り上がり、小が連続しはじめて更に掛け金は増えた。そして、この回、小にも大にも掛け金が殺到した。ディーラーはそれをことさらあおるように長い時間をかけて客に張らせた。その結果がゾロ目で親の総取りである。
大小の勝負のアヤはこのゾロ目にあるのだ。そうだ、そうに違いない。私は思わず声を出しそうになった。
深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

大小は壺の中の3つのサイコロの合計が11以下であるか12以上であるかを掛けるのを基本にしたゲームで、出目を全て当てるものや奇数か偶数かを当てるものなどの張り方にバリエーションがある。そして、3つのサイコロが全て同じ目がでるゾロ目のときは、親の総取りというルール。30年以上前に沢木氏が(旅の全財産を賭けてまで)導きだしたルールが通用するとはとても思えないけれど、でも「親がサイコロの出目を操作できる」という仮説を持って臨むと、とても戦略性のあるゲームに感じられてくる。
結果、1時間近くゲームを続けて1,100HK$(15,000円)の負け。一時的にはトータルでプラスになったりもしたのだけれど、ジリジリと減っていったり増えていったりする中で、ここ一番と勝負をして、そして負けてしまった。「小小小小小小」と小が6回連続で出た後に、「次こそは大」と全予算を注ぎ込んだら、やはり続けて小が出てしまった。
もしも大小が完全に公正なゲームであるとすると、毎回のサイコロの出目はマルコフ過程に従っているはずで、従ってどれだけ偏った出目が続こうとも、次の一回の出目のでる確率は50対50なのだという大原則も見事に忘れて、結局負け込んでしまった。
そして、沢木メソッドに従い、小が更に続いたところで「ゾロ目」に貼り始めるのだけれど、結局ゾロ目は出ないままディーラー交代がされ、そして自分の予算と時間も尽きてしまった。
自分がギャンブルに向かないことは分かっていたけれど(ジャンケンでさえも勝てる自信がない)、一瞬で7,000円が溶けてゆく感覚というのは、ある種の諦観を含んだ心地よささえあったりする。

がっかりしたままフェリーに乗り、九龍に戻る。夕方からツアーに合流をして、ネイザンロードという目抜き通りを2階建てオープンの観光バスに乗って走る。頭上をビルから迫り出した電飾看板がかすめてゆく。ジャッキーチェンだったら、悪者を看板にぶっつけて倒す場面に相当する。その後、クルーズ船に乗り、「ディナークルーズ」。ラテン系だとか80年代ディスコ的な生演奏をBGMに、和洋中華折衷のバイキングを食べ、そしてデッキに上がると、九龍のビルからはライトアップされたレーザー光線の演出があるという趣向。
あまりにベタベタな演出で、興味深い。
香港島に船が着き、蘭桂棒にタクシーで出る。