ウェブ人間論

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

「リンクされた脳」
あるアメリカ企業に大学生がインターンとしてやってきたときの話で、企業が何を頼んでも彼はすぐにこなしてくる。これはすごい奴だと思って、いろいろ聞いてみると、その子が何から何までできるんじゃなくて、ネットで常時繋がった何百人もの友達の中から、テーマごとに助けてくれそうな人を選んではやり方を聞いて、仕事をこなしているんですね。おそらく今の十代のアメリカのエリートはたくさんの質の高い友人とネットを介して脳がつながった状態で世の中に出たい、と思っているはずです。

多くの知識を持っていることは価値ではなくて、情報を効果的に構造化して価値を生み出すことや、そのための有効な人的ネットワークを持っていることに意味がある。
インターネットというツールが上記の考え方の実現可能性を高めたのだという梅田さんの紹介に対して、平野さんが「功利主義的な人間(関係)観」に対する違和感を表明するなど、コンサルタントと作家というジャンルの異なる2名の、ネットの可能性についての対談の本。

確かに上記のやり方でスピードアップされる種類の仕事もあるのかもしれないけれど、たとえば「最後の労働集約型産業」といわれて、暗黙知が大きなウェイトを占める「情報システム産業(エスタブリッシュ部門における"IT")」においては、上記のやり方は適用できるのか。

「偏在する形式知を構造化」するための「自動秩序形成システム」はWeb2.0の名の下に実現されつつあるのかもしれない。同システムを「暗黙知」に適用するためには、それに何を追加してゆく必要があるのか?