日本に殺されず幸せに生きる方法

 

日本に殺されず幸せに生きる方法(あさ出版電子書籍)

日本に殺されず幸せに生きる方法(あさ出版電子書籍)

 

イギリスを始めヨーロッパの「ちゃんとした国」は、柔軟な働き方の推進や子育て支援出生率を上げ、高齢化を食い止めています。 ヨーロッパは新興国のブラジルやインド、資源が豊富な移民国のアメリカやオーストラリアに比べたら、資源にも気候にも恵まれておらず、人件費も高いです。

これらの国と競争して経済力を高めるには、資源などに頼らずに富を生み出す仕組みを作り出していかなければなりません。その1つが、効率的に働く仕組みを作ることです。効率的に働く、とは、今あるお金や人から最大限の効果を生むということです。

 今の日本の"停滞と衰退の予感"は先例がないものではなく、1970年代の「イギリス病」を参照することができる。戦災復興のための基幹産業の過度な国有化、細分化されて強力な労働組合、手厚い社会保障などで経済が停滞して慢性的なインフレになったイギリスに、サッチャー改革で能力主義への移行がなされ、シティが生まれ競争力も取戻し、「ウィンブルドン」のように世界中から一流プレイヤーが集まる国になるという実績。

筆者は、そのような政策をまねることを説く代わりに、個人としてできることとして自らの考え方を改めて行動を起こすことを、自営の策として示す。

第5章のイギリス病のくだりは、確かに今の日本と似ている面があるし、ニュースで述べられる経済団体首脳の声明が示す意味と、そこへの備えの必要を意識する。

異端の統計学 ベイズ

 

文庫 異端の統計学 ベイズ (草思社文庫 マ 3-1)

文庫 異端の統計学 ベイズ (草思社文庫 マ 3-1)

 

現実世界とじかにかかわっている人はみな、ベイズのアプローチを採用している。実際に何かを決定する必要に迫られて初めて〔頻度主義の〕アプローチの限界が明らかになるんだ。必要なのは『自然の状態としてほかにどのような状態があって、それらはどれくらいほんとうだと信じられるのか』とう問いかけができるようになることだが、〔頻度主義では〕この問いを発することができない。ところがベイズ派は、複数の仮説を比較できる

 ベイズ統計学の発祥から、頻度主義統計学との論争に負け続けながらも、軍事・疫学調査世論調査などの分野で着実に実績を上げてきた歴史を紹介されている本。

エニグマ暗号の解読や大陸間弾道ミサイルの精度評価、潜水艦の探査など、軍事目的で実用化されてきた経緯から、統計学という世界ではずっと主流とはならなかったことは背景として興味深い。

そして、近年のコンピュータの計算力を得られるまでは、正規分布に帰着させて簡便で解析的な解を得られる頻度主義の手法が重用されてきたというのは、実用という面で見れば(軍事のような限られた例外を除いては)当然だったものと感じた。

ベイズの誓い-ベイズ統計学はAIの夢を見る

 

ベイズの誓い――ベイズ統計学はAIの夢を見る

ベイズの誓い――ベイズ統計学はAIの夢を見る

 

「原因や結果、因果関係はむしろ哲学の領域で、数式がその表現になるなど行き過ぎである」というのが、つまるところ数学(あるいは数学的確率論)からの視点である。

正直なところ、この考え方ではAIを解き明かすことはおぼつかない。自然科学者や数学者、いや統計学者の一部にさえ、哲学的思考を議論のための議論、無用で非生産的な議論として毛嫌いする向きがある。しかし、ここまでの章で見たように、日常の世界で「ベイズの定理」が人間の推論にうまく一致することはもはや否定できない。

 確率論の教科書の一節を引きながら、頻度論の枠組みで捉えることができない因果や主観確率を排することの無益さを説いている。

ベイズの定理の基礎から、階層ベイズモデルとMCMCによる解法の考え方、バイオインフォマティクス・カルマンフィルタなどの応用、そしてシンギュラリティやAIと確率との関係まで、幅広い話題が述べられる。

ベイズの定理は「主観確率」が特徴として挙げられることが多いものの、暗号解読や高頻度取引等、リアルタイム性に向いた逐次更新という特徴こそが、AIやシンギュラリティといった現代的な応用のカギとなるというのだと受け止めた。