不正アクセス/河合隼雄

コンピュータソフトウェア著作権協会のサーバから個人情報を引き出された事件で,不正アクセス禁止法違反と威力業務妨害で逮捕者が出た.

河合容疑者は昨年12月、朝日新聞社の取材に「(サイトの安全性について)警鐘を鳴らそうとした。このプログラムにはもともと外部からの侵入を防ぐ仕組みがなく、不正アクセスに当たらない」と話していた。だが警視庁は、サーバーには外部からの利用を制御する機能があり、河合容疑者の行為は、指令を送ってこの制御を免れる不正なアクセス行為と判断した。
(朝日新聞「CGIの欠陥突き情報引き出した京大研究員逮捕」04/02/05)

不正アクセス禁止法を見ると,攻撃対象のサーバがアクセス制御機能を有していたかがポイントらしい.脆弱性の存在するCGIが「アクセス制御機能」と見なされるかが争点になるということなのかな??よくわからない.いずれにしても文化庁長官である河合隼雄さんの親族が,文化庁所管団体への不正侵入で逮捕されたという点が,ニュース性の一因になっているんですよね.

こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)

こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)

河合隼雄さんのことは,村上春樹さんと対談されている本を読んで知った.

現代は一人一人の人間が自分の物語を見出してゆかねばならぬときだ、と私は思っている。

アンダーグラウンド (講談社文庫)

アンダーグラウンド (講談社文庫)

ここで河合さんが述べていることと(おそらく)同様のことについて,村上さんは次のように言及している.

人は、物語なしに長く生きていくことはできない。物語というものは、あなたがあなたを取り囲み限定する論理的制度を超越し、他者と共時体験をおこなうための重要な秘密の鍵であり、安全弁なのだから。(略)あなたは誰か(何か)に対して自我の一定の部分を差し出し、その代価としての「物語」を受け取ってはいないだろうか?私たちは何らかの制度=システムに対して、人格の一部を預けてしまってはいないだろうか?

現代では何らかのシステムに含まれずに生きていくには大きな困難が伴う.ほとんど不可能なことなのかもしれない.そのような状況でうまくやっていくために「自分の物語」が必要なんだという考えは,なんというか健全な発想だと感じるし,とても気に入っている.