色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

そう。あなたは何かしらの問題を心に抱えている。それは自分で考えているより、もっと根の深いものかもしれない。でもあなたがその気になりさえすれば、きっと解決できる問題だと思うの。不具合が見つかった駅を修理するのと同じように。ただそのためには必要なデータを集め、正確な図面を引き、詳しい工程表を作らなくてはならない。なによりものごとの優先順位を明らかにしなくてはならない。

もしそれが仮にも大事な意味や目的を持つものごとであるなら、ちょっとした過ちで全然駄目になったり、そっくり宙に消えたりすることはない。たとえ完全なものではなくても、駅はまず作られなくてはならない。そうでしょ? 駅がなければ、電車はそこに停まれないんだから。そして大事な人を迎えることもできないんだから。もしそこに何か不具合が見つかれば、必要に応じてあとで手直ししていけばいいのよ。まずは駅をこしらえなさい。

どれだけ救いがない状況に思えても、そして、どれだけ直面する問題が難しく思えたとしても、自分にとって意味のあるものならば、ちゃんと手に入れることができる。
シンプルだけど前向きなメッセージを受け止めた。「ダンス・ダンス・ダンス(上)」とも、通じるものがあると感じた。
もう一つ、「名古屋で生まれ育った人は、余所の街に出ようとせずに、ずっと名古屋で暮らし続ける」という、名古屋の街の閉鎖性も、物語展開では大きな役割を果たす。名古屋出身者としても、ストーリーに入ることができた。