物理学者、ウォール街を往く(その2)

読み終えた。

物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進

物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進

ブラックショールズモデルでは、ボラティリティが一定と仮定されている。だけど、現実の市場で売買されているオプション価格から逆算されるボラティリティは、期間や権利行使価格毎に差異があるという。それは、「突然の株式暴落のリスクに対する保険としての利用価値」に応じて、現実のオプション価格と理論価格との乖離が発生するためなのだという。このモデルの限界を超えるために、著者が提案したのが「インプライド2項格子(局所ボラティリティ)モデル」とのこと。
主旨は何となく判るけれど、使われる用語を理解しきれないので、ウィキペディア

ボラティリティ - Wikipedia

やはり、「幾何ブラウン運動」とは??という疑問は残るけれど、これは、ちゃんとした教科書のようなものを参照しないと理解できないと思われるので、とりあえず保留。

計量戦略グループの雰囲気は活気があり、元物理学者、元数学者、コンピュータプログラマーなどの多方面にわたる人材によって構成されていた。クオンツは金融理論をプログラマーに教え、逆にプログラマーはプログラミング・スタイルをクオンツに教えた。アカデミックな理論とトレーディングの間のギャップを埋めるために、トレーダーと緊密に共同作業を行った。体はビジネスの世界にあったが、頭は学問の世界から刺激を受けていた。それは恵まれた生活であった。

著者は、ゴールドマンサックスでの生活で、もっとも恵まれた時期について振り返っていた。そして、投資銀行を取り巻く環境変化によって、会社が徐々に官僚組織化していく。

上司の多くが把握できていない根本的な事実があった。我々は誰かの承認を得るためにモデルやシステムを構築しているわけではなく、問題が我々を惹き付けるがゆえに、モデルやシステムの構築に取り組んだのである。ある問題が発見されると、そこから必要性を嗅ぎ取り、それを吸収し、それに取り組んだ。情熱と誇り、感謝され、認められ、評価される喜びのために一生懸命に働いた。もちろんお金のためにも働いていたのだが、それだけで満足していたわけではなかった。

これは、ファイナンスのシステムに限らず、一般的なシステム開発プロジェクトの現場にも当てはまりそうな問題意識(もちろん、日本固有の大きな問題として、人材不足や多重派遣によるスキル不足やモラル低下といった課題は、別に存在はしているのだろうけれど…)。