奇跡の自転車

奇跡の自転車

奇跡の自転車

⇒新潮社書評:http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/505351.html

ぼくは大陸横断の旅に出る。少年時代の自転車に乗って。姉の亡骸を引き取るために。
スミシー・アイド、43歳。126キロ。事故で両親を喪った彼は、さらに長年消息不明だった姉の死亡通知を発見する。亡骸が安置されているのはLA。ひとりぼっちになった彼は酒とタバコとジャンクフードに別れを告げ、少年時代の自転車で東海岸を後にした――。重傷を負ったS・キングを癒した、魂と肉体の再生を謳う感涙の物語。

インターネットだか新聞だかの書評を見て購入。いわゆる「良い話」の小説。
少々老人臭いストーリーではあるけれど、アメリカという国の抱える影の部分に立ち向かっていく主人公は、風体があがらないながらも成長をしている。
荷台にテントを積んで、黙々と自転車のペダルを踏みながら思索する描写を見ると、キャンプ・ツーリングの感覚を感じられる。アメリカ横断をしたくなる、とまではいかないけれど。
⇒著者:http://www.ronmclarty.com/acting.asp
著者はSex and the Cityなど、ドラマの脇役を勤める役者で、見るからに主人公と重なる部分もある。元々は朗読CD向けだったストーリーを、スティーブン・キングが書評で絶賛して、小説として出版されることになった。

「こんなにいろんなものが砂漠に生えてるなんて、思わないですよね」ぼくは言った。「花だとか、いろいろ」
「雨だよ。雨がチケットなんだ。十月は雨の時期だからね」
「僕がロード・アイランドを出たのは八月二十九日でした」
フィリップはそのことを考えてから、こう言った。「それが今は十月の十六日だ。あんたが出発してから四十九日になるわけだな」

こういうシーンを仕事帰りに読みながら、今日が実際に10月16日であることに気付いたりもする。偶然。