他人を見下す若者たち

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

若者の物の見方や感じ方、行動の仕方に私自身が疑問を感じるようになって久しい。それは一言で言えば、他人をまったく無視したような言動である。この仮説というよりは、一種の私自身の思い込みを、心理学という土俵の上で縦糸と横糸として織り込んで、できるだけ誰もが納得に行く形にして人間理解につなげたいというのが本書を書くきっかけである。

アマゾンに並ぶ酷評を見ると、残念ながらそのような試みは脆くも失敗に終わっているのではないかという気がする。

この本の著者の経歴を見ると、自分の出身中学・高校の校長を勤めていたらしいということがわかり、読んでみた。その保護者会での保護者の「仮想的有能感」に満ちた発言として、下記が引用されている。

「このすばらしい環境と雰囲気の学校に入学することができて本当に良かったと思います。合格が決まってすぐ、春休みから○○塾に行かせていて、勉強は親の方でしっかり面倒を見ています。でも、少人数で家庭的な雰囲気があり、自由で自主性を重んじる校風のこの学校に入れて本当に満足しています…」

確かに無礼な発言ではあるけれど、卒業生の立場からみると、この保護者の発言は現実を適切に認識しているのではないかと感じる。