うつろな人間

【うつろな人間たち−想像することから責任が始まる】

  • 日本人を救済する為に地下鉄にサリンを撒く
  • 現代文明の崩壊を防ぐ為に鶴見川のタマちゃんを捕獲・保護
  • 男女平等社会の実現の為に地方図書館のトイレ,貸し出しカードを調査・批判
  • 限られた資源と地球環境の保護の為に牛乳パックの再資源化の活動

程度差こそあれ,多くの人が奇妙さを感じるが,あちら側の人々のやっている訳のわからないこととして結論付けてしまう.しかし,あちらとこちらとして,簡単に線引きすることができる種類の物でなく,こちらの人々も同様な奇妙なことを行いうる/行っているのではないか
主張者の視座に立ち,その範囲で論理展開する限り主張の内容に誤りはない.そして主張者の視座自体は正しいもの.ただし、一歩離れて常識で考えると,奇妙な主張であることは明らか.しかし限定された視野にもとづいた主張の常識的な非合理性を,論理的に説明することはしばしば困難
主張者の視座が,多くの観察者にとって,常識的に考えて奇妙である場合は,少なくとも事後に見れば,その過ちを指摘することも可能になる.
問題は主張者の視座が,多くの人にとってもっともらしく感じられる場合,また,主張者の視座を認めざるを得ない状況に,多くの人が置かれている場合に生じる.
あちら側の奇妙な人々の行動を,鼻で笑い飛ばすことは懸命ではなく,こちら側の普通の人々も,同様な行動を取り得る事を認めなければならない
観察者自身の常識に基づいてその人にとっての真実・視座を求めることが必要,科学的見地,社会正義,共有されている理想像,公共の利益,経済的合理性などの何らかの(しばしば権威をもつ)他者の提示する真実・視座を,盲目的に受け入れることは危険
 
【相互作用性・自己組織化】

  • オープンなシステムに内在する,本質的な危険性.ブーム・バスト
  • 個々人の行動は非線形的にシステム全体にインパクトを与える
  • 自由,完全競争,人々の善行・個人としての正当な努力が招く,負の結果.
  • 正しい事を限定された視野で,追求することの不当性の根拠

ある種の全体主義的な構造が非全体主義的なシステムにも内在している.
 
【限定合理性・誤謬性】

  • 他者によって提示された,尤もらしい真実・視座に代わる,思考のベース・拠り所
  • わかっていることは何もわからないということだけ

反証可能性・開かれた社会・満足化】

  • 危険な主張者の視座を見分けるための識別器
  • 識別器がアラームを鳴らすことを最重視
  • 開かれた社会は理想像(:実現の困難性)
    • 重大な選択には大きな声が必要.
    • 相互作用性が生み出す見えない敵

【個人的な真実・物語,いるかホテル,かえるくん】

  • すべては感性の論理にしたがって整合する,本当に重要な真理は個人的
    • 現実と向かい合う限りは戦わなくてはいけない(60億人の人にとっての真理)
  • うつろな人間たちの引き起こす危険性
    • 多くの人は他者に大きな影響を与える物語を語ることはできない
    • 自分とその極周囲のためのささやかな物語を作り上げていくか,わかりやすくて魅力的な影響力のある他者が提示する物語に,自分の物語の為の場所を無批判に明け渡してしまうかの選択肢.
    • いるかホテルという場の存在を認識することの重要性
  • 井戸の底からかえるくんを支えることは可能
    • ∵この大きな世界はすべて僕のためにある
    • とりあえずの枠組みもしくは核としてこのような物語を受け入れておくことが,(誰かの提示するわかりやすい物語に明け渡すよりは)制度化・システム化された現代においては,妥当であり安全である,有力な選択肢ではないか

アンダーグラウンド (講談社文庫)
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
グローバル資本主義の危機―「開かれた社会」を求めて
システムの科学
神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)
約束された場所で―underground 2 (文春文庫)