ザ・会社改造

 

彼らは自分が背負った新しい任務を正確に認識して、自分の能力が足りない点が何かを自覚し、初めからそのギャップをしっかり埋める行動に出た。それが「覚悟」というものだ。

困難な状況の中で彼らの覚悟を支えたのは、いずれも謙虚に考え抜く姿勢ではなかったか。それには経営リテラシーの高さとフレームワークが必要だ。それが明快なストーリーを生み出す。そのストーリーが周囲に伝わり、皆が熱くなってついていくのである。

どんなジャンプでも、《ポジション矮小化》を早々に解消し、やがてポジション以上の役割を発揮するようになることが大切だ。

著者は、金型部品・FA部品・生産設備に関する商品を製造・販売する会社であるミスミを大きく育てた経営者。本書は、ミスミという会社を急成長させるまでの取り組みが小説仕立てで紹介されている。
紹介されるテーマは、ABCを導入しての原価把握に基づく商品戦略の実現、中国市場への参入、トヨタ生産方式による生産改革、コールセンター改革など、どれも地に足の着いたテーマであり、それを成功させるためには、共通して戦略の重要性が語られる。
会社改造の取り組みは、「問題の本質」「改革シナリオ」「アクションプラン」がシンプルな言葉で表現され、共有されることで、初めて実現される。
本書の駿河精機社長のモデルとなった高家正行さんの講演を聴講したことをきっかけに、本書を読んだ。高家さんは、成長戦略を実現するためのフレームワークを示されたうえで、「胆力と冷静な観察眼」「リスクの事前の摘み取り」「Early Successの仕込み」というキーワードを示され、如何にして改革を成し遂げるかを話されており、本書にも通じるものがあった。