1973年のピンボール

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

僕が本当にピンボールの呪術の世界に入り込んだのは、一九七〇年の冬のことだった。その半年ばかりを僕は暗い穴の中で過ごしたような気がする。草原のまん中に僕のサイズに合った穴を掘り、そこにすっぽりと身を埋め、そして全ての音に耳を塞いだ。何一つ僕の興味を引きはしなかった。そして夕方になると目を覚ましてコートを着込み、ゲーム・センターの片隅で時を送った。

初めて読んだのが17歳で、今が34歳で、二倍の年月を重ねて読み続けていた。
ピンボールと向き合う時期も過ぎてきたのかもしれない。