探求―エネルギーの世紀(下)

探求――エネルギーの世紀(下)

探求――エネルギーの世紀(下)

物事の移り変わりは早い。シェールガスは市場で認識され始めるまでに、二〇年かかった。だが、いったん認識されると、数年にして、天然ガスばかりではなく、競合する原子力や風力の経済も劇的に変えた。
二〇三〇年には、世界全体のエネルギー消費は、現在の三五パーセントないし四〇パーセントましになっていると思われる。エネルギー・ミックスは、十中八九、現状と大して変わらないだろう。炭化水素は、供給全体の七五ないし八〇パーセントであると思われる。政治動乱、軍事紛争、グローバル経済の大きな転移、価格決定と規制の変化、画期的なテクノロジーのブレークスルーといった無数の要因が、そういう全体像を決定的に変えることも考えられる。しかしリードタイムが長いという法則は残る。イノベーションとテクノロジーの進歩の累積効果が、全面的な影響を及ぼし、エネルギー・システムの様相が全く違ってくるのは、二〇三〇年よりも先になるだろう。

下巻では、電力自由化とエネルギーミックス、気候変動、新エネルギー、電気自動車などのトピックについて解説されている。
エネルギー利用の効率化のため、電力取引や排出権取引などの社会工学的な手法が活用されるとともに、新エネルギーや電気自動車などのイノベーションに依存する部分も大きい。
本書では研究開発段階として詳説まではされていない水素自動車や藻を利用したバイオ燃料など、日経新聞に踊る見出しを眺めるにつけ、そう遠くない未来に、生活の在り様を大きく変えてしまうのではないかという気さえしてしまう。
本書で指摘されているように、リードタイムが長いものの、変化が訪れるときには急激に物事が変わるのだということを心に留めておきたいと思った。