女のいない男たち

女のいない男たち

女のいない男たち

村上春樹さんの短編集。

「木野さんは自分から進んで間違ったことができるような人ではありません。それはよくわかっています。しかし正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはあるのです。そういう空白を抜け道に利用するものもいます。言っている意味は分かりますか?」
木野には理解できなかった。よくわからないと彼は言った。
「そのことをよく考えてみてください」とカミタは木野の目をまっすぐ見て言った。「深く考える必要のある大事な問題です。答えはなかなか簡単には出てこないでしょうが」

一篇一篇の素材は、これまでにも繰り返し提示されてきたものである。
しかし、素材を通して描かれるテーマは、これまでよりも直接に訴えかけてくるものがあり、提示される答えもより明確になっている。
為すべきことを為さないことの危険、もう一つの世界が心地よくも危険な敵が潜む世界であることの意味、この短編集を通して、よりクリアに感じ取ることができる。