ITに巨額投資はもう必要ない

ITに巨額投資はもう必要ない―600億円の基幹システムを60億円で構築したJメソッド導入法

ITに巨額投資はもう必要ない―600億円の基幹システムを60億円で構築したJメソッド導入法

ジェイが新生銀行に入社直後、新生銀行はすぐにリテールバンクサービスの立ち上げに着手しました。日本長期信用銀行時代のシステムが役に立たないことは明白であったため、リテールバンクのための新しいシステム構築が必要となりましたが、このときジェイは、メインフレーム上での大規模開発ではなく、パソコンレベルの小型マシン(サーバー)で動く既存のソフトウェアの組み合わせを採用することにしました。

新生銀行にて、通常600億円の投資が必要な基幹系システムを60億円で構築した「Jメソッド」を紹介する本。
「Jメソッド」は、IT主導でなく経営主導でシステム開発をする手法であり、以下の3要素に支えられるとのこと。

  • 部品化:トップダウン方式での分解
  • バザール:バザール利用による汎用部品のリユース
  • ビジネスパイプ:人間・マシン・ソフト3者の同一平面処理

この要素だけをみると目新しいものとは感じられず、トップダウンでの業務分析を行って、分析結果に基づいてオブジェクト指向の手法によってシステム分析を進めるということを、愚直に成し遂げたというように読める。
成功要因として、これが基幹系刷新プロジェクトではなく、対企業向け業務を行ってきた長期信用銀行が、新たにリテール向け業務に進出することに伴う、組織リストラを含んだ基幹系の新規開発プロジェクトと見なせることが挙げられることがあるのではないか、という印象を受けた。
しかし一方で、ボトムアップで動き始めていた新事業分野を正しくシステム化するために、強いリーダーシップが発揮されたと感じるくだりも見受けられる。

通常、コスト削減効果は、人件費、スペース費用削減、あるいは旧システムサポートコストの削減の形をとって現われるでしょう。したがって、どんなに立派なシステムが完成しても、実際に人員やスペースを減らしたり、システムサポートを打ち切ったりしない限り、効果は実現しません。
スペース返却やサポート打ち切りについては、あらかじめ計画的に必要な手配を進めることはもちろんです。それに加えてプロジェクトを推進する経営トップやリアル・チェンジ・リーダーは、特に人員の削減には十分に配慮する必要があることを肝に銘じなければなりません。