日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門

日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません

日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 もう代案はありません

金融日記というブログを書いている著者による本。
新聞で報道される経済ニュースの背景にある、経済学の基本的な考え方をわかりやすく説明している。
グローバル資本主義の世界で日本がうまくやっていくためには、消費税増税所得税減税、貿易自由化や小さな政府の実現などをとおして、機会平等を徹底させて、国家間での魅力を高めることが必要なのだという。

こうやって民間の銀行に渡った国債は、民間の金融機関同士で活発に売買されます。これを国債の流通市場といいます。金利というのは民間の債券トレーダーによって刻々と決められていくのです。政府が国債を民間の銀行に売れば、民間が持っていたお金が政府に移動するだけで、全体での貨幣の量は変わりません。
しかし日銀が国債の流通市場で、一人のプレイヤーとして民間の銀行から国債を買えばお金は増えます。なぜならば日銀だけは自分でお金を刷れるプレイヤーだからです。自分でお金を刷って国債を買うのです。刷るといっても、ほとんどの場合はパソコンでマウスをクリックしてデータベースの中の数字が変わるだけです。逆に日銀が国債を売れば、お金の量は減ります。ところでお金を刷るといっても、中央銀行は民間の銀行と国債の売買をするだけで何も富が増えるわけではないことに注意してください。

日銀の仕事は、通貨の信用を守ること(金融政策)であって、そのために政府からは独立した裁量を持って、金利を調整したり貨幣の総量を決めたりする。その手段が国債の取引である。
政府は直接に通貨の信用を高めることはできず、国債の信用を守ること(財政政策)が仕事である。国債の信用は、将来の徴税権によって担保される。ちょうど、民間企業の株価の理論価格が、将来の利益の割引現在価値で決まるようにして、国債の利回り(価格)は市場で決定される。
「日銀がお金を沢山刷ってインフレを起こせば、政府の財政赤字や景気の問題は解消する」というロジックが実は正しくないのは、たぶん金融政策と財政政策を混同してしまっているからなのだと思う。日銀がお金を刷るというのは、つまりは国債を買い入れることであり、国債を買い入れるかどうかの判断は、為替相場市中金利を安定させるために行うべきであって、その他の意図を判断に含めてしまっては、途端に金融政策が正しく機能しなくなってしまう。
政府にとっても、昔の金本位制の時代とは違って、国家の通貨の総量は財産による裏付けされる以上の規模に達しているため、「将来ちゃんと回収できる」という信頼感が崩れてしまっては、途端に国債の信用不安が広がってしまう。