ファイナンスのための確率微分方程式
ファイナンスのための確率微分方程式―ブラック=ショールズ公式入門
- 作者: トーマスミコシュ,Thomas Mikosch,遠藤靖
- 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
- 発売日: 2000/03
- メディア: 単行本
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そして筆者も指摘しているけれど、この本に書かれている全てを追うことができたとしても、確率論の難しい話は上手に避けて記されているので、全部を理解するまでの道のりには程遠い。
以下、理解の概略。
ブラック=ショールズによるヨーロピアン・コールオプションの理論価格は、以下の前提で求められる。
- オプション価格は、満期における自己資金調達によるポートフォリオの期待値と、権利行使価格の差の割引現在価値に等しい(そうでなければ、裁定機会が発生することになる)
- 自己資金調達によるポートフォリオは、リスク資産である株式と、無リスク資産である債券で構成される。
- 株式の価格は幾何ブラウン運動によって与えられ、債券は利子率一定であるとする。
また、ブラック=ショールズ式は、以下のとおりの定式化と解釈がされる。
- 自己資金調達のモデルは確率微分方程式として定式化できる。
- 定式化された確率偏微分方程式に伊藤の公式を適用することによって、陽解が得られる。
- ギルザノフの定理による測度変換によって、オプション価格は、ある時点におけるポートフォリオの割引現在価値の条件付期待値として解釈できる。
株式の価格のモデルとなっている「幾何ブラウン運動」とは、線形ドリフトを持つブラウン運動の指数関数を示す。乗法ノイズをもつ線形伊藤確率微分方程式の一意解が幾何ブラウン運動であることが、このモデルが採用される一義的な理由。
ブラウン運動は増分が正規分布に従うために、至る所で微分不可能な関数である。裏を返せば、どれだけ直近の未来のことも確率的にしか知ることができないというのは、株価のモデルとして納得感があるのかもしれない。そして、その指数関数を取ることによって値が非負になり、価格のモデルとしての妥当性もある。
そして著者は、幾何ブラウン運動がランダムに摂動された指数関数であることから、面白い指摘をしている。
経済学に携わる人たちは指数的成長を信じているので、このモデルに極めて満足している