夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

僕は僕の心の中に深く暗い豊かな世界を抱えているし、あなたもまたあなたの心の中に深く暗い豊かな世界を抱えている。そういう意味合いにおいては、たとえ僕が東京に住んでいて、あなたがニューヨークに住んでいても(あるいはティンブクトゥに住んでいても、レイキャビクに住んでいても)、我々は場所とは関係なく同質のものを、それぞれに抱えていることになります。そしてその同質さをずっと深い場所まで、注意深くたどっていけば、我々は共通の場所に――物語という場所に――住んでいることがわかります。
――その世界はどんな世界ですか?
我々の地下には長いトンネルがめぐらされていて、僕らは真剣にそうしようと思えば、そして幸運に恵まれれば、どこかで巡り会うことができるのです。
グローバルという言葉は、僕にはあまりひんとこない。なぜなら我々は特にグローバルである必要なんてないからです。我々は既に同質性を持っているし、物語というチャンネルを通せば、それでもうじゅうぶんであるような気がするんです。
夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

村上春樹の過去13年に渡るメディアからのインタビュー集。
その多くのインタビューは海外メディアからのものであって、また書籍の発売後にインタビューがされることが多いので、各作品について率直に語られている。
「自分を掘り下げていくことで、他者に繋がって行くことができる」や「現実世界と並行する"パラレルワールド"で、既に失われてしまったものとの再開を果たして帰ってくる」などの、繰り返し物語のモチーフとなっている内容についても、インタビューに応じて繰り返し別の言葉で語られる。