ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

映画スターであることと、巨大なエゴを抱えて生きるのは同じことのように世間では思われているけれど、実際にはエゴなんてひとかけらも持ち合わせていないことが、何よりも大事なことなの。リッチな有名人になりたくないってわけじゃないんだよ。私としてもいちおうそのへんを目指しているし、いつかそれにもとりかかるつもりでもいる。でももしそうなっても、私はなおかつ自分のエゴをしっかり引き連れていたいわけ。いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ごはんを食べる時にも、このままの自分でいたいの。
ティファニーで朝食を

有名な映画の原作となった本。映画自体は見たことがないのだけれど、小洒落たタイトルとは裏腹に、かなり個性的なキャラクターと、アメリカの成功者の抱える病みたいなものを描いたテーマで、ただスマートなだけではないストーリー。その意味で、「グレート・ギャツビー」や「偶然の音楽」といった他のアメリカ人の描く小説に通じるものがある。
宝石店であるティファニーでは、もちろん朝食はサーブされないのだけれど、取り澄ました人々にしっかりと守られた空間の象徴として表現されている。それと同時に、ティファニー的なるものを手に入れるためには、実際にはそれと正反対の物事や人々に身を委ねなければいけないというジレンマは、現代共通にありがちな悩みで、共感を受けるのかもしれない。
本作は短編集で、一緒に収録されている「クリスマスの思い出」も、心に染み入る感じで良い。