1Q84(Book2)

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

"Book2"を読み終える。現時点で出版されているのはBook2までであって、"Book3"に続くという旨もどこにも記されていない。だけれど、Amazonの書評を眺めていると、続きがでるのではないかという予測をしている人がいて、確かにそのように言われると、そうでなくてはならないという気になってくる。

心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。

新刊のオビに引用されているように、「別の世界」で物語が進む。そして、Book2を終わりまで読んでも、ストーリーは「この世界」に戻って来ない。これまでの長編小説では、主人公が「別の世界」に足を踏み入れることがあっても、多くの場合、別の世界からの警告によって、「この世界」に戻ってくることになるにもかかわらず。

「ここにあるのは、あっちとはまた違う現実なんだ。あんたは今はまだここでは生きていけない。ここは暗すぎるし、広すぎる。もうそろそろ行った方がいいな。ここはあんたには寒すぎるから」
ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

「さあ早く。あなたはここを出ていかなくてはならないし、あなたがここから出ていく方法はこれしかないのよ」と彼女は言った。部屋の暗闇の中に廊下の光がさっと差し込むのとほとんど同時に、僕らは壁の中に滑り込んだ。
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

「遅くならないうちにここを出なさい。森を抜けて、ここから出ていって、もとの生活に戻るのよ。入り口はそのうちにまた閉じてしまうから。そうするって約束して」
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

"Book2"では、主人公は徐々に「別の世界」に移行していくことになる。そして、もう一人の主人公も、彼の紡ぎだす世界に徐々に組み込まれていくことになる。そして「別の世界」の袋小路に陥ってしまわないように、注意深く手順を踏んで、「この世界」への繋ぎ留めを確保している。

「君は重い試練をくぐり抜けなくてはならない。それをくぐり抜けたとき、ものごとのあるべき姿を目にするはずだ。それ以上のことはわたしにも言えない。実際に死んでみるまでは、死ぬということがどういうことなのか、正確なところは誰にもわからない」

その上で、どのような「試練」をくぐり抜けることになるのか。きっと続刊では、これまでにない規模と詳細さと質感で「別の世界からの帰還」について語られることになるのだろうという(随分と勝手な)期待を持ちながら、読み終える。