豊田市美術館

豊田市美術館に行く。
ミシャ・クバル|都市のポートレート|豊田市美術館 (Toyota Municipal Museum of Art)
不協和音─日本のアーティスト6人 DISSONANCES-Japanese Six Artist|豊田市美術館 (Toyota Municipal Museum of Art)
会場に着いた時間、まさにミシャクバル氏本人の講演会が開かれている日時だったようで、チケット売場で整理券の案内をされ、折角なので聞きにいってみる。
ミシャクバル氏は、都市に光を持ち込むとどうなるかというテーマで活動をしている芸術家。「パブリックライト、プライベートライト」という作品では、72軒の家庭を訪問して「家のランプを貸してくれ」と頼んで一箇所に配置して作品とし、代わりに貸し出した画一的なデザインのランプに付け替えた前後のリビングの写真を対峙させて見せたりしている。
普通の人が生活している場所を作品に仕立て上げたりする訳なので、そこに生活する人との摩擦も生じる。アメリカのどこかの都市で「大通りのある区間をライトアップすることによって、光のトンネルを作る」という作品を制作したときのこと。「その街で僕が公演会をすることになったときに、駅には警察官の出迎えが来て警察の車で会場まで送ってもらった」のだという。なぜかというと「僕の作品が展示されている期間中、全部で6台の車が交通事故を起こしたので、その人たちが怒って僕に賠償請求にやってくる恐れがあったからね」という。そして「明らかに事故の原因は光のトンネルではなくてスピードの出しすぎだ。まあ、車のスピードの出し過ぎというのは、僕らドイツ人の発想かもしれないけれどね」というジョークを飛ばせるぐらいの、なかなかアグレッシブな人物。
また、アメリカの別の都市では「公園の中にあるトンネルを、ライトアップすると同時に、アルミホイルのようなものでトンネルの内壁を包み込むことによって、光と音の効果を楽しむ」という作品を作ったときのこと。「都市公園ではどこもそうだけれど、昼間は観光客や家族連れでにぎわうトンネルは、夜になると麻薬密売人や不良たちでにぎわうことになる。演出に怒った麻薬密売人たちによって作品は2日間で破壊されてしまったよ。製作の準備に10日間もかけたんだけどね。彼らには、アルミホイルに反射する自分の顔と対峙するということに慣れていなかったんだね」とも。
会場からの質問に「僕は完成した作品だけでなく、製作のプロセスにも重きを置く。この講演会の講堂のように光も空調もコントロールされた空間ではなく、都市というオープンな空間での表現であるのだから」と応えていたのは、きっとそういうことだったのかと後から思う。