適切な大きさの問題さえ生まれれば

ほぼ日刊イトイ新聞に連載されている、糸井重里梅田望夫岩田聡の3氏の対談。

糸井 なんていうか、ものごとをつくって進めていくときは、こういう人が必要なのかもしれない。たとえば、Googleの人たちが、世界中の街を自動車で走って写真を撮って地図に貼りつけているっていうのは、ある種の病でしょう?
梅田 そうですね。ふつうに利益というものを考える会社からすれば、病気というか、あれは狂気です。ほかにも、世界中の本をスキャンすると決めて、全部で5千万冊ぐらいあるらしいんですけど、全ページを来る日も来る日もスキャンしてたりする。
糸井 いいなぁ(笑)。
梅田 正気の沙汰とは思えないんだけど、Googleって、「世界中の情報を整理し尽くす」という理念において、それを続けるんですよ。Googleアースの航空写真にしても、半年で写真を取り替えるべきだということで、Googleがチャーターした飛行機は世界中を毎日飛んでるんです。「あれは、いずれなにかを支配するためだ」なんて言う人もいますけどね。
糸井 いや、そういうレベルじゃないですね。
梅田 そういうレベルじゃないんですよ。
岩田 ふつうの人間や会社にできる行動ではないですね。
梅田 そうなんです。
糸井 でも、そういう「病な成分」は、岩田さんのなかにもぼくは感じるんです。思えば、現代に限らず、歴史の中にはそういう人がいつもいるのかもしれないですよ。Googleの人たちだって、情報を整理し尽くすことがみんなに役立つと思うからこそやってるわけだし。
梅田 かなりいるのかもしれませんよね。やっぱり人のためになにかするというのは、気持ちのいいことでしょうから。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 適切な大きさの問題さえ生まれれば。

梅田 「そこにクロスワードがあれば解くのと同じです」とまつもとさんも言ってましたけど、「問題を見つけると解決を考える」というのは、本能に根ざした行動なのかもしれないですね。
糸井 そうですね、ついやっちゃうという。「いい」とか「悪い」とかの概念を入れずに成り立つロジックだというのがものすごくおもしろい。
梅田 そうなんです。そこに善悪の判断とか、利己、利他みたいなものがない。
糸井 最近はその善悪という概念を逆に使い道にしている人たちもいるじゃないですか。なんというか、あっちよりこっちのほうがいいことをしてるぞ、って言い合うような。そういうことよりも、この理屈のほうがよっぽどよくわかるなぁ。いやぁ、なにしろ、インパクトありました。

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目の前に提示されたパイを皆で取り囲んで、「このパイを公正に分配するためには、どのようなルール付けが必要か。また、そのルールが適正に運用されていることを監査する仕組みをどう構築して、違反した場合の取り扱いはどのようにするか。」を真剣に討議したりする。
そして、その運用が始まって暫くたつと、どこからともなく「事前に決議したパイ分配ルールを遵守してない人がいる」だとか、「分配制度に不備があり、これこれこういうケースのときに割を食っている人がいる」更には、「このパイの製造工程を見ると、健康や環境の悪化要因を持ち、ポリティカリー・コレクトネスの観点から消費すること自体が不適切である」などという議論が巻き起こることになる。
議論の中でなされる主張の一つ一つはいちいち尤もで間違ってはいないのかもしれないけれど、結局のところ非生産的な討論に過ぎない。そんな不毛な話をしている間にパイは冷たくなり、少しずつでも着実にパイの総量は逓減していく。
何かを生み出したり、目の前の問題を解決する行為自体の価値が過小評価されたり、すぐに忘れ去られたりする一方で、出てきた結果に事細かにケチをつけるという流れには、そろそろ風向きを変えていく頃合じゃないかという気もする。

ポパー全体論ユートピア主義)を「理想社会を実現することが成治の究極目標だと考えたうえで、社会全体を余すことなく一挙に変革することによってそれを実現しようとするもの」と規定し、(一)人間が社会全体を把握し得ない、(二)社会全体の変革は常に変革を必要とし無限後退に陥る、(三)政策のもたらす反響をすべて予測しえないし、予測により社会の行動が変わるため、合理的に調整することは不可能であり、(四)社会全体の改造計画の作成は、科学的実践的知識の不足から不可能、などの理由から全体論を否定し、本来できるのは漸次的社会工学piecemeal social technologyだけであるとしました。安全で最もつつましやかで現実主義的な「避けられる不幸(社会的に)の除去」という原理を掲げ、「緊急で現実的な社会悪ひとつひとつと、いまここで闘うことが賢明である」としています。
また社会工学の研究方法は、ポパーの提唱する科学理論が従わなければならない事実によるテストそのものが可能かといういわゆる反証可能性基準を社会理論にも適用させることによって、連続的で漸進的な改善を可能にすることと考えていました。

http://www.soc.titech.ac.jp/information/index.html

何かを管理・監視することで物事を良くしよう(ユートピア主義)という発想は、とても分かり易くてお手軽のように見えるけれど、状況を良くする助けにはならない。それよりも、目の前にある物事を一つずつ着実に改善していく(漸次的社会工学)ことにエネルギーを注いでいる方が、余程生産的でもあるし前向きだ。
カール・ポパーが反発していたナチズムや社会主義は、先進国からは遥か昔に姿を消したはずだけれど、"想像力の欠如"という開かれた社会の敵は、21世紀のこの世の中にもちゃんと存在し続けている。
ご機嫌な人を見ると、不機嫌になる社会:日経ビジネスオンライン
「考えない勇気」を持てば、頭がスッキリ! - ココロ社
直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。 - My Life Between Silicon Valley and Japan
人を見る目 (内田樹の研究室)
渡米して最初に思ったこと(1) - 自由の本質、、、at your own risk (人のせいにしない) - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20081102/1225594386
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