SIと建築:このビルは空を飛べます

IT業界は、しばしば建設業界のアナロジーで語られる。システムインテグレータとゼネコンの産業構造には似たものがあるし、PMBOK発行元のPMI(:プロジェクトマネジメント協会)も元々建設業のPMの集まりだったと聞いたことがある。

●トイレはいらない?
システム開発でままあるのは「トイレ?そんなのいらないってコンサルが言ってたよ!次世代インテリジェントビルなんだから!」なんてお客さんがいたりするところです。常識的に考えて、トイレがいらないわけないですよね。どんな無人ビルだそりゃ。
あと、お客さんもシステム屋さんも、図面にトイレが書かれていないのに気付かなかったりすることもあります。そりゃエンジニア失格なんだけど、いろんなことに振り回されるとつい些細なことを忘れてしまったりします。いや、些細じゃない!

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システム開発と建築を比べると、産業としての成熟度が全然違うために、建設業では考えられないトラブルがIT業界を取り巻く。そして、施主と施工業者の関係についてのジョークが語られることになる。

●上流工程のお仕事
上流工程が破綻する原因は色々ありますし、後になって気付く失敗もあります。

  • コンサルが出来ないことを出来ると言って仕事に仕立て上げた。「このビルは、空を飛べます!(嘘つきにもほどがある!)」
  • 営業が絶対出来ない予算で取って来た。「1億円あればできます!(土地代だけで1億超えるんだけど…)」
  • お客さんが何を作りたいか自分でもわかっていない。「うーんと、ほら、都庁みたいなアレ、アレが作って欲しいんだよ…(アレってなんだ?)」
  • ディテールにこだわるけど肝心なことが何一つ決まらない。「ロビーは大理石で、ドアノブは全部ホテルタイプで…(それより階数とか部屋数を決めようよ…)」
  • 絶対に必要なものを組み込むことを忘れていた。「(そういえば…トイレはどこ?)」
  • 業界では常識かも知れないけど一般的じゃなくて認識相違「客商売なんだから最後に4が付く部屋番号なんてダメに決まっているじゃないか!」
  • その他諸々

最初の二つはともかく、それ以降の話はSEの本分で、こういった問題を起こさず、何が必要なのか、自分の常識に囚われていないか、大事なものを見落としていないか、というのを探っていくのが仕事なのです。

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こういう話をみるにつけ、クライアント企業のIS部門のエンジニアが何をなすべきかを考えさせられることになる。SIerに勤める友人が語っていた、“ダメなIS部門”の事例はこんなのだった。

  • システム利用部門の要件を抑え切れない
  • クライアント企業内部の部門調整を、丸投げする

これを反面教師にする意識が必要。

If architects had to work like programmers...
建築士様、
家を一つ設計施行してくださいな。まだ何が必要か具体的なことはわからないので、そこはよきに計らう方向で。
完成後の家の費用は、今住んでいる家よりも安上がりでないと駄目なことを留意してくださいな。それでいて、今の家の欠陥(あたしが歩くたびにキッチンの床がきしむとか、壁の断熱がなってないとか)が全て修正されている必要があるのは言うまでありません。設計の際には、保守費用も最低になるよう工夫するのもお忘れなく。
施行においては最新のデザインと素材を惜しまないように。モデルルームにひけをとらないように。ただし、キッチンには1952 年ギブソン製の冷蔵庫を含め、今あるものが全て無理なく収まるようにすること。正しく家を設計するにあたって、当然ですが私の子供たち、義理の家族達に詳細にインタビューするように。そうそう、家に関しては一家言お持ちの姑をお忘れなく。一年に一度も来るんですからね。

404 Blog Not Found:惰訳 - 建築士がプログラマーのごとく働かねばならぬとしたら

これは英語圏の事例(.fiなので、フィンランドか)。「キッチンには1952 年ギブソン製の冷蔵庫を含め、今あるものが全て無理なく収まるようにすること」というくだりに溜息。