The Art of Project Management(その4)

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アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

去年の11月に購入して、今年の9月から断続的に仕事帰りに読み始め、ようやく読み終わる。
動的に変化し続けるITプロジェクトの中で、如何にして泥臭い状況を切り抜けてきたかという著者の経験に基づく。プロジェクトマネージャと呼ばれる偉い人だけでなく、末端で関与する自分のような人間にも、多くの学ぶことがあった。

11.2 よく見かける問題
最初のレビューが行われるまで、私はプロジェクトが順調に進んでいるものと思っていました。しかし、既にプロジェクトは悲惨な状態に陥っていたのです。彼らの質問に対する私の答えは、10人いたメンバーのうち9人までを失望させ、彼らは私の言うことに耳を傾けなくなりました。彼らは全員が経験豊富な開発者やアーキテクトであり、私の答えは彼らの質問よりも質的に劣っていたのです。そしてみんなが怒鳴り始め、チームの士気は低下し、すべては最悪の状態になりました。
こういった状況を「炎の裁判」と呼ぶマイクロソフトの同僚もいます。炎に身を焦がされながら、分厚い皮手袋もなしに手探りで出口を探さなければならないのです。私はこのレビューを経験したことで初めて、優れた仕事をするには、いかに多くのことを考えなければならないのかということを実感させられました。ものごとをうまく進め、上述した悪夢のような打ち合わせが二度と起こらないようにすることこそが、私の行うべき仕事なのです。

プロジェクトのなかで発生する問題とは、「現実と計画とのギャップの存在」「ギャップの実態、原因、責任者の認識の混乱」「ギャップ解消のためのアクション(リソース割り当て)の不明確さ」といった現象として発現する。

13.1 優先順位付けによってものごとが成し遂げられる
私がPMとして過ごしている時間の大半は、順序付けされた一覧表の作成に費やされています。順序付けされた一覧表とは、単にさまざまな項目を重要度の高い順に並べたものです。私は、保有している様々な知識やスキルの活用を期待されていますが、実際に行っているのはこういった一覧表の作成なのです。
優先順位が決まっているのであれば、いつでも、どこでも、最も重要な主題に議論を収束させるための質問を投げかけることができます。これによって目標に対するチーム全員の認識をリフレッシュし、必要不可欠なものと、便利であるものの必要不可欠でないものを見極めることができるのです。
優先順位を設定すると、「ノー」と言わなければならない必要性が何度も出てくるという副作用が生まれます。この言葉は、英単語としては最も短いものの一つですが、多くの人々がこの言葉を言えずに苦しんでいます。しかし、あなたが「ノー」と言わなければ、優先順位は決定できないのです。優れたリーダーやチームマネージャは、目標にそぐわないものごとに対して「ノー」と言うことで、チーム全体のレベルを一定に保ち続け、チームを率いていかなければならないのです。

「ノー」と言う時に、ものごとが成し遂げられる。だけど、(当然ながら)状況に応じた適切な「ノー」の言い方があり、冷酷さと抜け目なさの両立が必要。

16.5.1 自分自身の政治の場を作る
あなたがプロジェクトマネジメントに関与しているのであれば、自らの周囲に政治的な場を作り出していることになります。その場を愚考と行き当たりばったりの世界にするか、公正な世界にするかはあなた次第です。
優れたマネージャは常に、自らのチームを守る道を見つけ出します。組織階層のどのレベルにおいてもいえることですが、こういった保護を伴うリーダーシップの実現には、一段上の努力と成熟が必要となります。しかし、それこそが優れたマネジメントの本質なのです。結局のところ、あなた自身の影響力が及ぶ範囲で積極的にリーダーシップを発揮することが、自らの力を成長させる最善の方法となります。

そして、何より「場」を知り、その中でベストを尽くすことが必要。
組織の場であるとか、政治的な根回しだとかを「汚いもの」と見なすのではなくて、組織である以上は、ただそこにあるものとして仕組みを理解することが必要だという。これまで、いかにも日本的な考え方だと感じていたものが、実はアメリカの革新的な企業でも重要視されている。本質的なところは万国共通か。