サブプライム

新聞によく載っているサブプライム問題、「スイスの投資銀行」「政府系ファンド」「オイルマネー」「ケイマン諸島」など、ゴルゴ13に登場しそうなキーワードが並んでいて、不謹慎ながら興味深い。
一国の政府がマネーゲームに乗り出したり、投資銀行を傘下に収めたりというのは、やはり空恐ろしい。個人・法人がゲームに失敗したときの悪あがきには限界があるけれど、政府ともなると地政学リスクになる。ジョージ・ソロスは、巨額の利益をもとに大規模な慈善事業を展開したりもするだろうけれど、政府が巨額な利益を得ても、国力のバランスが実体経済と乖離するばかりとなる。
サブプライム問題、要は日本のバブル崩壊と同じじゃないか、何故同じ失敗を繰り返すのだという見方もある。一方で、今回の問題に至る道筋は「風が吹けば桶屋が儲かる」並みに予測困難だという見方もできる。高度な金融工学を駆使したといっても、結局は「それぞれの事象は独立」という仮定に基づいた確率モデルに過ぎないのだろうし(これは憶測)、カオス(入力値の微小なズレによる決定論的な系の予測不可能性)の影響もあるはずだ。そして、市場の一参加者であるファンドの影響力が、マクロ的な規模で影響を及ぼすという可能性も、モデルには織り込まれてはいないはずだ(ノーベル賞学者が寄ってたかって地球シミュレータを動かしても検証できない。多分)。
以下、自分のための「風が吹けば桶屋が儲かる」メモ
[サブプライムローンの誕生]
 信用力の低い人向けの住宅ローンという市場が世に生まれる
 ローン債権を金融商品として証券化すれば、リスクは投資家に転化される
 借り手の一定割合は返済不能に陥るけれど、担保を売却して資金回収が可能
 証券化によって借り手を増やせば、大数の法則でリスク(=分散)は減る
[住宅価格の上昇]
 これまで家を買えなかった人が、サブプライムローンで買えるようになる
 家を買う人が増えるので、住宅価格が上昇する
 値上がり期待で需要が刺激され、実際に益々値上がりする(バブル)
[住宅価格の下落]
 家が高値で売れるので、沢山住宅が供給される
 信用力が低いけど、家を買うのを我慢していた人の数は限られる
 信用力の低い人の住宅購入が一巡すると、需要の伸び率が鈍化する
 伸び率が落ちると、市場に供給されるのを待つ住宅在庫が増える
 需給のバランスが崩れて、住宅価格が下落する
[サブプライムローンの崩壊]
 住宅価格が下落で担保価値が下がり、デフォルト率が不変でも証券利回りが減る
 サブプライムローンの「リセット」という条項により、数年後に利率が上昇
 ローン商品発売から数年が経ち、リセットの対象者が増える
 リセットの対象者が増えると、全体としてのデフォルト率上昇する
 証券の利回りが益々低下、元本割れが続出
[市場の混乱]
 格付け機関サブプライムローン証券を、それなりに高評価
 付与された格付けに基づいて、ファンドが証券を多額購入
 証券価格の下落によって、ファンドの利回りも悪化
 ファンドは信用取引を活用していて、損失にもレバレッジが効く
 ファンドの多くはケイマン諸島で登記されていて、運用実態が不明瞭
 米国他の大手投資銀行が、ファンドを組み入れていたため巨額損失
 (この辺の経緯は自分の語彙を越えている。はてなダイアリーキーワード(⇒サブプライムローン)に解説)
[社会不安]
 住宅ローンの返済が滞って立ち退きの事例が増加、社会問題化
 通常の住宅ローンならば、貸し手が利率引下げなどを実施して緩和措置可能
 証券化された住宅ローンであるため、利率引下げの意思決定が困難
 政府介入といったマクロ的施策が困難で、社会不安が止められない
[不明点]
 サブプライムローンという不安定性に満ちた証券を、レバレッジを効かせるという更に不安定な手法で運用しておきながら、マーケットニュートラルだと言える根拠となる数学モデルはどんなものなのか??モデルの前提のどの部分が崩れたというのか??
[推測]
http://allabout.co.jp/glossary/g_money/w001597.htm
GS US ニュートラル 8月8日の基準価額の下落について
マーケットニュートラルは、割安株を購入し、割高株を空売りし、両者の保有額を同等にしておくことによって、市場全体の価格変動リスクを吸収するというもの。ゴールドマンサックスのサブプライム問題に起因する損失の説明を読んでみると、「割安だと思っていたサブプライム証券が暴落し、割高だと思っていたその他の証券はそれ程下落しなかった」とある。
これは、つまり「サブプライム証券は割安ではなく、市場がリスクを織り込んだ価格だった」のであり、ファンド運用者がそのリスクを見過ごしていた、という解釈になるか(数学モデル自体の誤りではなく、その入力変数の指定誤り??)。