ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ

さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。

だとか、

ギムレットを飲むには少し早すぎるね」

など、非常にハードボイルドな小説。読んでいると、自分がとてもタフな人間になれるんじゃないかという気がしてくる。大体、ギムレット(⇒ギムレット - Wikipedia)がどんなカクテルだかも良く知らないというのに、そんな効能のある小説というのは素晴らしい。
ハードボイルドとは何か?という訳者の解説。

彼の所見や対応が彼の自我意識をまったく反映していないというのではない。自我をまったく反映しない個人的所見や対応などどこにもない(はずだ)。そしてその所見にはもちろんひとつの一貫性がある。
にもかかわらず、フィリップ・マーロウはそのような自分の所見や対応の具像的なあり方に正確に綿密に固執することによって、またその一貫性を様式的なまでに美しく維持することによって、むしろ自我の実装をどこか別の場所に巧妙に隠匿しているのではあるまいかという疑いを、我々は、あくまで漠然とではあるが、しかし避けがたくいだいてしまうことになる。
何故なら一貫性というものは、自我のあくまで一機能に過ぎないわけなのだから。

人の振る舞いが、自意識を感じさせるよりも強く、その一貫性という側面を感じさせるとき、それがある種の雄弁さを導き出すのだという。