河合隼雄

対話する生と死 (だいわ文庫)

対話する生と死 (だいわ文庫)

河合隼雄氏の本の文庫化。「笑い」についてや、

「笑い学」
笑いは対人関係において二面性をもっており、笑いを一同で共有するときは、全体としてのまとまりを感じさせ、関係の強化のほうにはたらくが、笑う者と笑われる者、笑う者と笑わない者などの分離が生じるときは、むしろ、一体感を壊し関係を弱くするほうにはたらく性質を持っている。このために、人間関係における笑いはやや危険な側面を持っているのである。

「恐怖」について、ユング心理学を専門とする氏が解説をする。

「恐怖とのつきあい方〜存在を揺るがされるとき」
人間っていうのは、自分の人生観とか世界観とかシステムをもちながら生きているが、それをどこかで揺り動かすものが恐怖である。一人ひとりの恐怖に対するキャパシティーが、大きくなるほうがおもしろい。恐怖のキャパシティーを広げていくためには、決まりきったものに頼らないこと。決まりきったものに頼るほど、恐怖は少なくなるわけです。
イデオロギーではなく、コスモロジーこそが大事。コスモロジーというのは、宇宙観、世界観のなかに、自分の存在を入れて考えること。ところが、イデオロギーというのは、自分がその外に出てるんです。自分を外に出して世界を見て、こうなるべきである、これが正しいのだと。けれどそれでは、「そうあるべきこと」を「やる」自分というのは、いったいどこにいるんだか、おかしなことになるわけですね。
だから、「怖い話」というテーマで言うと、イデオロギーに取りつかれたら「怖いもんなし」です。自分は絶対に正しいんですから。

昨年夏に脳梗塞で倒れたとのニュースを聞いたけれど、ウィキペディア河合隼雄の項をみると、先日、文化庁長官を休職のまま任期満了されたとのこと。