村上さんのところ

 

村上さんのところ コンプリート版

村上さんのところ コンプリート版

 

 

僕は人間の意識というのは深く掘り下げていけばいくほど、どんどん広く他者に結びついていくものだと理解しています。そしてそれが極限にまで進めば、ある意味での「普遍」に達するのではないかと考えています。もちろん「ある意味での」普遍です。普遍的な普遍ではない。そのへんはむずかしいですね。
 

悪しき物語に対抗するには、善き物語を立ち上げていくしかないという考えには、今でもまったく変わりはありません。論理に対抗する論理にはどうしても限りがあります。論理対論理は地表の戦いであり、物語対物語は地下の戦いです。地表と地下がシンクロしていくことで、本当の効果が生まれます。自分の物語を、できるだけ「善き物語」(決して倫理的にgoodということではありません)に近づけていきたいというのが、僕の一貫した気持ちです。

 

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

 人間はいろんな選択肢を選んできて、こうして今の自分になっているわけだけれど、もしある時点で違う選択肢を選んでいれば、今のような自分になっていないかもしれないわけですよね。そういった「もう一人の別の自分」になれる機会って、現実生活にはありません。でも小説の中では、もしそういう人になりたいと思えば、なれるわけです。